大正文学小説大全
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Publisher Description
大正デモクラシーの風潮の中、白樺派や新思潮派、プロレタリア文学など新しい文学が生まれた。五十二編を収録。
(大正文学小説大全について)
大正時代とその文学
一九一二年に明治天皇が崩御し、時代は大正時代に入ります。大正初期には、夏目漱石、森鴎外の二文豪は積極的に大作を発表し存在感を示しました。
一九一四年にヨーロッパで勃発した第一次世界大戦は、日本の経済に異常な好景気をもたらしましたが、一方では国内の労働者の生活は著しく困窮に陥り、労働不安が社会の大きな問題となって来ました。また大正デモクラシーという民主主義的風潮が広まりました。この指導的理論として隆盛をきわめたのが吉野作造の唱えたいわゆる民本主義でした。文学においても、白樺派を中心として広く人道主義の作品が書かれました。白樺派の主な作家としては、志賀直哉、武者小路実篤、有島武郎、有島生馬などが挙げられます。また、永井荷風や谷崎潤一郎は耽美派と呼ばれ、官能美・感覚美に溢れる作品を書きました。
理想主義的な白樺派に対し、雑誌「新思潮」によって理知的な作品を発表した新思潮派が現れましたが、その代表的存在が芥川龍之介です。芥川は夏目漱石の弟子でもあり、鋭い知性で作品を構築し、一躍文壇の寵児として数々の優れた短編小説を書きました。また「私小説」「心境小説」と呼ばれる我が国独自の小説が生まれたのもこの時代です。
また大正末期にはプロレタリア文学が起こり、社会運動の広がりとともに大きな影響力を持つようになりました。小林多喜二や葉山嘉樹、宮本百合子などが優れた小説を書きました。しかし、プロレタリア文学は政府の厳しい弾圧もあり、昭和初期には姿を消してしまいます。
この作品集には、「羽鳥千尋」をのぞき青空文庫より以下の大正文学の傑作小説を年代ごとに分類して五十二編収録してあります。(一部明治四十五年のものも入っています。改元による。)
また各作家の紹介文を各作家の一番最初の小説の前に置きました。
大正元年(一九一二年)
興津弥五右衛門の遺書(森鴎外)
かのように(森鴎外)
羽鳥千尋(森鴎外)
妾宅(永井荷風)
大正二年(一九一三年)
阿部一族(森鴎外)
行人(夏目漱石)
大正三年(一九一四年)
こころ(夏目漱石)
堺事件(森鴎外)
大塩平八郎(森鴎外)
大正四年(一九一五年)
あらくれ(徳田秋声)
羅生門(芥川龍之介)
道草(夏目漱石)
雁(森鴎外)
山椒大夫(森鴎外)
ぢいさんばあさん(森鴎外)
最後の一句(森鴎外)
大正五年(一九一六年)
鼻(芥川龍之介)
芋粥(芥川龍之介)
明暗(夏目漱石)
高瀬舟(森鴎外)
渋江抽斎(森鴎外)
大正六年(一九一七年)
カインの末裔(有島武郎)
戯作三昧(芥川龍之介)
大正七年(一九一八年)
生まれいずる悩み(有島武郎)
小さき者へ(有島武郎)
蜘蛛の糸 (芥川龍之介)
地獄変(芥川龍之介)
大正八年(一九一九年)
性に眼覚める頃(室生犀星)
或る少女の死まで(室生犀星)
子をつれて(葛西善蔵)
魔術(芥川龍之介)
蜜柑(芥川龍之介)
恩讐の彼方に(菊池寛)
新生(島崎藤村)
大正九年(一九二〇年)
一房の葡萄(有島武郎)
杜子春(芥川龍之介)
舞踏会(芥川龍之介)
大正一〇年(一九二一年)
溺れかけた兄妹(有島武郎)
大正一一年(一九二二年)
幼年時代(室生犀星)
哀しき父(葛西善蔵)
トロツコ(芥川龍之介)
大正一三年(一九二四年)
椎の若葉(葛西善蔵)
日輪(横光利一)
牢獄の半日(葉山嘉樹)
大正一四年(一九二五年)
大導寺信輔の半生 (芥川龍之介)
檸檬(梶井基次郎)
城のある町にて(梶井基次郎)
淫売婦(葉山嘉樹)
大正一五年(一九二六年)
Kの昇天(梶井基次郎)
ナポレオンと田虫(横光利一)
伸子(宮本百合子)
セメント樽の中の手紙(葉山嘉樹)
((古典教養文庫について)
古典教養文庫は、日本のみならず広く世界の古典を、電子書籍という形で広めようと言うプロジェクトです。以下のような特長があります。
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