今昔物語集 本文 全冊 今昔物語集 本文 全冊

今昔物語集 本文 全‪冊‬

Beschreibung des Verlags

「今昔物語集 本文 全冊」

「今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)」は平安時代末期、12世紀頃、成立した説話集です。
全31巻、およそ1,000話から成り、すべての話が「今は昔」で始まることから名付けられました。
作者は不明で、誰がどうしてこんな膨大な数の話を集めて整理したのか謎です。

全巻の本文を1冊の電子書籍にしました。
本らしく縦書きで、好きな大きさの文字で読めます。

テキストはすべて、古典文学電子テキストを作成、公開するサイト「やたがらすナビ」のデータを使用しました。
「攷証今昔物語集(本文)」https://yatanavi.org/text/k_konjaku/index.html
「攷証今昔物語集」芳賀矢一校訂(冨山房、大正10(1921)年)から本文をテキスト化し、
新漢字で、漢字ひらがな混じりとし、句読点や括弧等補って読みやすく整えたのは、すべて「やたがらすナビ」によります。
心から感謝します。

巻は、国や内容で大まかに分類されています
インドや中国、日本の仏教説話、それ以外に色々、不思議な話が集められています。
日本各地、様々な階層の人々が登場します。
1つ1つは短い話ながら、近代の小説家にも多くのインスピレーションを与えました。

索引はありませんが、電子書籍なので全文検索できます。
お気に入りの土地や人物を探して読んでも楽しいかも。

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巻14 弘法大師挑修円僧都語 第四十
(弘法大師、修円僧都と挑める語)

今昔、嵯峨の天皇の御代に、弘法大師と申す人御しけり。僧都の位にして、天皇の護持僧にてなむ御ける。亦、山階寺の修円僧都と云ふ人在けり。其れも同く護持僧にて候ひ給ぬる。此の二人の僧都、共に止事無き人にて、天皇、分き思食す事無かりけり。
而るに、弘法大師は唐に渡て、正しく真言教を受伝て、弘め行ひ給ひけり。修円僧都は心広くして、密教を深く悟て、行法を修す。
而る間、修円僧都、天皇の御前に候ふ間、大なる生栗有り。天皇、「此れ煮しめて持て参れ」と仰せ給へば、人取て行くを見て、僧都の云く、「人間の火を以て煮ずと云ふとも、法の力を以て煮候なむかし」と云ふ。天皇、此れを聞給て、「極て貴き事也。速に煮るべし」とて、塗たる物の蓋に栗を入れて、僧都の前に置つ。僧都、「然れば、試に煮候はむ」とて、加持せらるるに、糸吉く煮られたり。天皇、此れを御覧じて、限無く貴むで、即ち聞し食すに、其の味ひ、他に異也。此如く為る事、度々に成ぬ。
其の後、大師、参り給へるに、天皇の此の事を語らせ給て、貴ばせ給ふ事限無し。大師、此れを聞て、申し給ふ様、「此の事、実に貴し。而るに、己れ候はむ時に、彼を召て煮しめ給ふべし。己れは隠れて試み候はむ」と、隠れ居ぬ。
其の後、僧都を召て、例の如く栗を召て煮しめ給へば、僧都、前に置て加持するに、此の度は煮られず。僧都、力を出して、返々す加持すと云へども、前の如く煮らるる事無し。其の時に、僧都、奇異の思を成して、「此れは何なる事ぞ」と思ふ程に、大師、喬(そば)より出給へり。僧都、此れを見て、「然は、此の人の抑へける故也」と知て、嫉妬の心、忽に発て立ぬ。
其の後、二人の僧都、極て中悪く成て、互に死々(しねしね)と呪詛しけり。此の祈は、互に止めてむとてなむ、延べつつ行ひける。
其の時に、弘法大師、謀を成て、弟子共を市に遣て、「葬送の物具共を買ふ也」と云せむとて買はしむ。「空海僧都は早く失給へり。葬送の物具共買ふ也」と教へて云はしむ。修円僧都の弟子、此れを聞て、喜て走り行て、師の僧都に此の由を告ぐ。僧都、此れを聞て喜て、「慥に聞つや」と問ふに、弟子、「慥に承はりて告申す也」と答ふ。僧都、「此れ、他に非ず、我が呪詛しつる祈の叶ぬる也」と思て、其の祈の法を結願しつ。
其の時に、弘法大師、人を以て、窃に修円僧都の許に、「其の祈の法の結願しつや」と問はす。使、返来て云く、「僧都、『我が呪詛しつる験の叶ひぬる也』とて、修円は喜て、今朝結願し候にけり」と。
其の時に、大師、切りに切りて、其の祈の法を行ひ給ひければ、修円僧都、俄に失にけり。
其の後、大師、心に思はく、「我れ、此れを呪詛し殺しつ。今は心安し。但し、年来、我に挑み競て勝るる時も有りつ。劣る時も有て、年来を過つるは、此れ必ず只人には非じ。我れ、此れを知らむ」と思て、後朝の法を行ひ給ふに、大壇の上に軍荼利明王踏□て立給へり。其の時に、大師、「然ればこそ、此れは只人に非ぬ者也けり」と云て止ぬ。
然るを思ふに、「菩薩の此る事を行ひ給ふは、行く前の人の悪行を止どめむが為也」となむ語り伝へたるとや。
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*目次*
├天竺(インド)仏法部
│├巻1 天竺
│├巻2 天竺
│├巻3 天竺
│├巻4 天竺 付仏後
│└巻5 天竺 付仏前
├震旦(中国)仏法部
│├巻6 震旦 付仏法
│├巻7 震旦 付仏法
│├巻8 (欠巻)
│└巻9 震旦 付孝養
├震旦世俗部
│└巻10 震旦 付国史
├本朝(日本)仏法部
│├巻11 本朝 付仏法
│├巻12 本朝 付仏法
│├巻13 本朝 付仏法
│├巻14 本朝 付仏法
│├巻15 本朝 付仏法
│├巻16 本朝 付仏法
│├巻17 本朝 付仏法
│├巻18 (欠巻)
│├巻19 本朝 付仏法
│└巻20 本朝 付仏法
├本朝世俗部
│├巻21 (欠巻)
│├巻22 本朝
│├巻23 本朝
│├巻24 本朝 付世俗
│├巻25 本朝 付世俗
│├巻26 本朝 付宿報
│├巻27 本朝 付霊鬼
│├巻28 本朝 付世俗
│├巻29 本朝 付悪行
│├巻30 本朝 付雑事
│└巻31 本朝 付雑事
├付録
└底本などに関する情報

GENRE
Belletristik und Literatur
ERSCHIENEN
2025
14. Dezember
SPRACHE
JA
Japanisch
UMFANG
2.098
Seiten
VERLAG
犬井
ANBIETERINFO
Umemura Toshiaki
GRÖSSE
5,8
 MB
落窪物語 落窪物語
2025
竹取物語現代語訳付 竹取物語現代語訳付
2015
伊勢物語現代語訳付 伊勢物語現代語訳付
2015