二十三センチの祝福
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Publisher Description
お葬式をしました、でその手紙ははじまった。 あなたにもらった靴の、お葬式をしました。二回、かかとの修理に出し、三回、自分で色を塗り直しました。だいじにだいじに履きました。加納達夫(かのうたつお)は遠い土地から送られてきた手紙を丹念に読み直し、便せんの最後に綴られた差出人の名前を眺めた。天海(あまみ)ルルコ。もうこの世には存在しない女からの手紙だった。四つ折りにして机の引き出しへしまい、コンビニに祝いのケーキを買いに行った。 家具店に務める加納は、古い木造アパートに暮らしている。靴の修理を趣味とする加納は、同じアパートに住むすり切れた靴を履いた若い女に、思わず声をかけてしまう。「そちらの靴、直しましょうか」。その後加納は、女が売れないグラビアアイドルだと知る―—。 深い後悔を抱えて生きる男におとずれた、かすかな希望を描き出す一編。文芸あねもねR制作委員会