• HUF599.00

Publisher Description

文豪トルストイ五十八歳の時の恐るべき短編。


(書き出しの部分からの抜粋)


「諸君!」と彼は言った。「イワン・イリッチが死んだよ。」

「へえ?」

「ほら、読んで見たまえ。」まだインキの香のする新しい新聞をさしのべながら、彼はフョードル・ワシーリエヴィチにそう言った。黒い枠の中には次のように印刷してあった。

…………

この訃報を聞いたすべての人は、この死のために生ずる勤務上の異動や変化を、さまざまに胸のうちで想像したが、なおそのほかに、親しい知人の死なる事実そのものが、訃報に接するすべての人の心中に、『死んだのはおれではなくてあの男だ』という、いつも変わらぬあの悦びの情を呼びさましたのである。

『まあ、どうだ! 死んじまった。だが、おれはこの通りぴんぴんしてるぞ』一人一人の者がこう考え、あるいはこう感じた。しかし、イワン・イリッチの親しい知人、いわゆる親友たちは、これから退屈きわまる礼儀上の義務を果たして、告別式にも列席したり、未亡人のところへ慰問にも行ったりしなければならない、というようなことをその際われにもあらず自然と考えずにはいられなかった。



(この本について)

この古典教養文庫版の「イワン・イリッチの死」には次のような特長があります。

1、現在では使われない言い回しや言葉は、現在普通に使われる言葉に置き換えました。現代人には意味の取りにくい文は、平易な文に書きなおしました。

2、原文で触れられた場所、人物、絵画などを中心に、関連する画像を、著作権フリーのものにかぎって、いくつか挿入しましたので、より興味深く読み進めることができます。

3、わかりにくい言葉や、登場人物、でき事、作品などについての適切な注を、割り注の形で入れてありますので、本文の理解が深まります。これは原訳書にあったものに、編集者が適宜加えました。

4、人名・地名は、現在通常に使われている表記に変更しました。


(ロシア文学翻訳の金字塔!)

訳者米川正夫(1891-1965)は、岡山県に生まれました。1909年東京外国語大学ロシヤ語本科に入学、旧友の中村白葉などとともに『露西亜文学』を創刊します。1914年処女出版として新潮文庫からドストエフスキーの「白痴」を刊行開始しますが、この時は第四巻で中断の憂き目をみます。 

その後幾つかの職を経験しながらも、1929年に白葉とともにトルストイ全集を岩波書店から刊行します。1935年の「罪と罰」を訳し、ドストエフスキーの5大長編をすべて訳し終わりました。 

戦後は、個人訳による「トルストイ全集」(全23巻)と「ドストエフスキー全集」(全18巻)を刊行しました。 

ドストエフスキーが日本にこれほど受け入れられたのは、この米川正夫による業績によるところが大きいと言われます。まさに金字塔と言えるでしょう。たとえば、小林秀雄はドストエフスキーについての評論を数多く書いていますが、そこに引用されているドストエフスキーはすべてが米川正夫のものによっています。また三島由紀夫の「仮面の告白」の冒頭引用されている、「カラマーゾフの兄弟」のドミートリーによる「熱烈なる心の懺悔」もまた米川訳によっています。 


(古典教養文庫について)

古典教養文庫は、日本のみならず広く世界の古典を、電子書籍という形で広めようと言うプロジェクトです。以下のような特長があります。

1、古典として価値あるものだけを

これまで長く残って来たもの、これから長く読み継がれていくものだけを選んで出版します。

2、読みやすいレイアウト

文章のまとまりを、適切な改ページで区切って、電子書籍デバイスはもちろん、スマートフォンやタブレットなどでの読書に最適化しました。またMacやパソコンでも読むことができます。

3、すばやい操作性

索引を付けましたので、目次から直接アクセスできます。

4、美しい表紙

プロのデザイナーによる美しい表紙をつけました。書籍と関連づけられた美しい表紙で、実際の本を読むような感覚に浸れます。

5、スピーディーな改版

紙の本と違い、誤植の修正や改訂などすぐに対応でき、刻々と進化を続けます。古典教養文庫のブログに書き込むことで迅速なレスポンスが得られます。

GENRE
Fiction & Literature
RELEASED
2017
July 7
LANGUAGE
JA
Japanese
LENGTH
112
Pages
PUBLISHER
古典教養文庫
SIZE
319.6
KB

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