私は海をだきしめていたい(小学館の名作文芸朗読)
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【小学館の名作文芸朗読】
私は悪魔にも神様にも復讐されると信じていた。馬鹿は馬鹿なりに何十年か生き続けていた。しかし近頃は、一人の女が私に安心を与える。自惚れが強く頭が悪く、貞操の観念がない女だ。昔は女郎で、娼婦の生活のため不感症だった。私自身も貞操の念は希薄で、遊びのつもりだ。しかし私は、この女の不具な肉体が好きになってきた。女の肉体の形をした水を抱きしめているような気持ちになるからだ。