首を失った蜻蛉(小学館の名作文芸朗読)
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発行者による作品情報
【小学館の名作文芸朗読】
仲田に仕事を見つけてほしいと頼んだものの、どんなに金になっても豚を屠ることは厭だった。杉木立の中を歩いていた彼は、首のない大きな蜻蛉の屍を見つける。群がる黒蟻を見て思う。共産主義的蟻の社会のように、人間にもこうした不安のない社会はできないものか。現在の自分は、この首のない蜻蛉のようだ。自分の家は破産し、親から離れて実社会に飛び出したが、このまま就職口がなかったら・・・。