スウィート・ヒアアフター
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- ¥470
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発行者による作品情報
お腹に棒がささった状態から生還した小夜子は、幽霊が見えるようになってしまった。バーに行ったら、カウンターの端に髪の長い女の人がいる。取り壊し寸前のアパートの前を通ると、二階の角部屋でにこにこしている細く小さい女の人がいる。喪った恋人。元通りにならない頭と体。戻ってこない自分の魂。それでも、小夜子は生き続ける。涙あふれる書き下ろし小説。
APPLE BOOKSのレビュー
よしもとばななの「スウィート・ヒアアフター」。交通事故で恋人を亡くした女性が、遺された者の苦しみや葛藤、自責の念、故人への愛情などのさまざまな思いに苛まれながらも、新たな出会いによって自らを取り戻していく姿を描く。事故を機に亡くなった人が見えるようになるというSF的な設定を織り交ぜながら、作品全体にはどこか優しく寄り添うような雰囲気を漂わせている。”死と向き合う"というテーマは初期作「キッチン」など著者の多くの作品で取り上げられているが、本作は特に東日本大震災後に彼女が感じた死生観も大きく反映されている。大事な人の死という困難に直面してもなお、生き続けることでやがて人間は絶望から這い上がることができる。そんなメッセージの込められた、切実で重たい現実を抱える人々に生きる勇気を与えてくれる作品。