ルポ・収容所列島―ニッポンの精神医療を問う
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- ¥1,700
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発行者による作品情報
「本当は夢で、目が覚めたらやっぱり現実は閉鎖病棟内のままだった、と想像すると、怖くなって泣き出しそうになります。入院しているときは外で生活しているイメージがまったくできなくて、声を上げても誰も助けてくれず、二度とここから出られないと思った…」
「医療ではなかったと思っています。収容所のような場所でした。人間が人間を閉じ込めることができる世の中は怖い」
DV夫の策略で長期入院させられた看護師、拒食症を理由に77日間身体拘束された14歳の少女、規制はザル状態! まじめな女性ほど陥る市販薬乱用、認知症の診断で強制入院を余儀なくされた元警察官…
東洋経済オンラインで2700万PV突破の人気連載「精神医療を問う」待望の書籍化。
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日本の精神科病院を取り巻く現状は他の先進諸国と比較して異常な点ばかりだ。なぜ、世界標準からかけ離れた日本特有の精神医療がまかり通っているのか。本書は、東洋経済新報社の編集局宛に届いた、閉鎖病棟からの退院を望む患者の手紙をきっかけに、調査報道部の記者3人が足掛け3年に及ぶ精神医療に関する取材の記録である。当事者たちの切実な声に耳を澄まし、日本の精神医療の抱える深い闇へと分け入っていきたい。
APPLE BOOKSのレビュー
ビジネスニュースサイトで話題を集めた、日本の精神医療の過酷な現状に迫る連載記事の書籍化。精神科病院への入院体験がどういうものか、患者や関係者への取材を通してルポルタージュの形で伝える。3人の記者が3年にわたって取材を重ねた数々の事例は、恣意(しい)的な診断、強制入院に身体拘束、大量の薬物処方など、医療という言葉からは想像もつかない、まさに収容所という言葉が当てはまるもの。言うまでもなく、精神の病とどう向かい合うかは現代社会の中でますます大きくなっている課題の一つだが、その究極的な方法として取られている精神科病院への入院が、患者の人格も人権も考慮されていないという現実に衝撃を受ける。これは精神医療の体制が整っていない行政の仕組みのみならず、日本社会全体が精神科の患者を差別的に扱い、病気に向き合っていないという事実を示す。いつ誰が罹患(りかん)してもおかしくない現代社会において、本作のテーマはダイバーシティを考える上で避けては通れない。