影王の都
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- ¥850
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発行者による作品情報
【第1回創元ファンタジイ新人賞選考委員特別賞受賞作】村はずれに一人住む少女リアノ。両親が相次いで亡くなり、兄も夢を追って家を出ていってしまった。そんな孤独な彼女のもとにある日やってきたのは、口をきく髑髏。図々しいことに髑髏はリアノに砂漠に連れていって欲しいと求めた。若く美しい娘としゃべる髑髏の奇妙な道行き。だが砂漠で待っていたのは、〈影王〉が統べる呪われた〈影の都〉。不老不死を望んで神の怒りにふれ、永遠に砂漠を彷徨う運命になったという伝説の都だった。捻れた運命の糸に搦め捕られるリアノ。〈影王〉とは何者か。/第1回創元ファンタジイ新人賞選考経過、選評=井辻朱美、乾石智子、三村美衣
APPLE BOOKSのレビュー
16歳の少女・リアノが主人公のファンタジー作品「影王の都」。小さな村で孤独に暮らす彼女のもとに、言葉を話す不思議な髑髏(どくろ)が訪れ、広い世界に出ようと誘う。2人が向かった砂漠で、はぐれてしまったリアノは一人で旅することになる。髑髏を探しさまよう中で、さまざまな人々に出会い成長するリアノ。やがて旅の行き先は影の都へと進んでいき、謎めいた影王の存在に迫っていく。風景や人物像が一瞬で浮かび上がるような比喩に満ちた描写が物語に立体感を与えており、躍動感のある筆致は読み手をぐいぐいと引っ張っていく。多くの伏線が物語の進行とともに鮮やかに形を整えていき、階段を駆け登るようにひとつの真実に辿り着く展開は圧巻。ファンタジー小説の新たな旗手として期待される羽角曜の瑞々しい作風にも注目したい。