あいまい生活
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3.0 • 1件の評価
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- ¥1,500
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発行者による作品情報
明大前駅から徒歩18分の「ティラミスハウス」。その名にまったく似合わない古い木造長屋のシェアハウスの住人たちは、それぞれ事情を抱えていた。貧困、DV、生活保護、外国人実習制度――。運命に翻弄されながらも、ひっそりと息を詰め生きていく女性たち。持たざる者たちの本音と生きづらい現状が見えてくる問題作。
APPLE BOOKSのレビュー
現代を生きる若い女性のリアルな心情を描くことを得意とする作家・深沢潮による「あいまい生活」。主人公は、東京の古くて安い女性専用シェアハウスで暮らす6人の女性たち。劇団に所属し舞台に立つ夢を追う風香、不法滞在している外国人労働者のウェイ、心療内科に通い生活保護を受けるさくらなど、それぞれに事情を抱え、貧困に苦しみながらも必死に生きる彼女たちの等身大の姿が語られる。章ごとに登場人物の視点が切り替わりながら進んでいき、女性たちの本心や背景が明らかになっていく構成が絶妙。明るく振る舞う風香は嫉妬心の激しい性格を秘めていたり、無愛想なさくらには病気がちで小心者な面があったりと、個々のキャラクターが際立っていき、群像劇としての魅力が光る。互いに気持ちがすれ違うこともあるが、一つ屋根の下で共に生活するひとときは温かく、寄り添う場所の大切さも身に沁みる。自分ではどうすることもできない環境でも一歩一歩前に進む彼女たちに、勇気をもらえる作品。