ある愛の寓話
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- ¥1,800
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発行者による作品情報
村山由佳デビュー30年記念作品
原点回帰にして到達点。猫、犬、馬、人形など、異質な存在との交歓によって導かれるカタルシス、圧倒的な熱量をはらんだ作品集です。
収録作品
晴れた空の下
同じ夢
世界を取り戻す
グレイ・レディ
乗る女
訪れ
APPLE BOOKSのレビュー
恋愛文学の名手として活躍する村山由佳が、作家生活30周年となる2023年の初めに贈る、人と人ならざる者との交流と愛をふんわりと描いた六つの短編集『ある愛の寓話』。幼いころ、人と遊ぶよりも動物や人形、物との触れ合いを好んでいたと明かす村山は、児童文学『ごんぎつね』が自分の原点とも語る。通じ合えない相手を思い続けたごんぎつねの心は六つの短編に染み込んでおり、陰から慕う純粋さとけなげさが涙を誘う。父がくれたカエルのぬいぐるみについて告白する「晴れた空の下」に始まり、余命間近の捨て猫、貴重な編みかごのナンタケットバスケットなど、愛の対象と語り手はさまざま。別れの切なさだけでなく、そこから始まる新しい世界を感じさせる筆致はさすがだ。愛の対象を人間以外に広げたことで想像力が伸び伸びと解き放たれ、30年の節目に違う扉が開かれたよう。村山作品に触れたことのない読者も手に取りやすい、純愛を描く寓話集になっている。