かあさんから 生まれたんだよ
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発行者による作品情報
おかあさんを、ずっとまっているんだ。内田麟太郎が描く、母への切なる想いが、美しく広がる……。まだことばをすこししかしらなかったころ。/ばくはラジオからながれてくることばに、ふとみみをかたむけた。/うみのはは。/(そうか。かあさんはうみに……)/ぼくは水平線みつめた。/かあさんが、なみのうえをすべってくるようで。しろいきものの女神さまのようなすがたで。/まちつづけた。ずっと。水平線をみつづけながら。/ときどき、そっとよびかけて。/かあさん。/ゆうひがしずんでいく。それでも……。ぼくはまちつづけた。/ひがしずみなみのおとだけになった。/ぴちゃぴちゃ。ぴちゃぴちゃ。/(かあさんは……、こなかった)ぼくはよみちをかえっていった。/それからなん年してからだろう。ぼくはすこしじぶんをわらった。海の母じゃなくて、生みの母だったのだ。/……。