けんぐゎい
-
- ¥1,400
-
- ¥1,400
発行者による作品情報
利発だが酷い痘痕の姉ふゆ。逆上せ癖で縹緻よしの妹りよ。幼くして父を亡くし、ふゆは手習師匠の手伝いに、りよは船宿の下女奉公に出された。師匠の養子で禍々しいほどに歪んだ性癖をもつ宗三郎から手籠めにされたふゆは懐妊するが、現人神と崇められる女医者と出逢い、彼女の人生は大きく変わっていく。自我に目覚めた主人公が、女の生と向き合う、時代小説の新しい扉!
APPLE BOOKSのレビュー
2026年上半期ベストブック:歴史 - 映画化もされた『平場の月』など、現代小説で人々の心の機微を繊細に描いてきた著者が初めて挑む時代小説。江戸時代後期を舞台に、利発だが痘痕(あばた)のある姉と、美人だが口の悪い妹を軸に、社会から抑圧、疎外され利用される女性たちが、自由を目指し新たな世界を築いていく姿を描く。まず衝撃的なのが、表紙に描かれた怪物だ。女性が主人公の時代小説には不釣り合いなこの怪物の正体は、中国古典に登場する白沢(はくたく)という神獣で、人語を解し病魔をはらい為政者を導く異形の存在だという。現代アーティストfeebee作の『観察者効果 白沢 憂鬱』に描かれた白沢の姿は、女性一人では生きにくい社会の「圏外」で、新たに生きる道を創り上げていく主人公の姿に重なる。執筆にあたっての入念なリサーチにより、人々の暮らしぶりから情景まで実に丁寧に描かれ、時代小説の文体を踏襲しながら現代的な手触りも併せ持つ。主人公たちだけでなく、横暴で無責任な若旦那や現代なら毒親と呼ばれるような母親まで、登場人物がすべてリアルで生々しい。そして、封建社会、ルッキズム、男尊女卑といった数々の理不尽は、江戸時代という過去を舞台にしていながらも現代人に深い共感を呼び覚ます。