



しをかくうま
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4.0 • 2件の評価
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- ¥1,600
発行者による作品情報
第45回野間文芸新人賞受賞作
「東京都同情塔」が芥川賞を受賞して更なる注目を集める著者が、
ほとばしる想像力で描く、馬と人類の壮大な歴史をめぐる物語。
太古の時代。「乗れ!」という声に導かれて人が初めて馬に乗った日から、
驚異の物語は始まる。この出逢いによって人は限りなく遠くまで
移動できるようになった――人間を“今のような人間”にしたのは馬なのだ。
そこから人馬一体の歴史は現代まで脈々と続き、
しかしいつしか人は己だけが賢い動物であるとの妄想に囚われてしまった。
現代で競馬実況を生業とする、馬を愛する「わたし」は、人類と馬との関係を
取り戻すため、そして愛する牝馬<しをかくうま>号に近づくため、
両者に起こったあらゆる歴史を学ぼうと
「これまで存在したすべての牡馬」たる男を訪ねるのだった――。
APPLE BOOKSのレビュー
気鋭の芥川賞作家がダイナミックな言葉遊びと文章表現で描く、馬と人の歴史を巡る純文学『しをかくうま』。物語は現代と古代を行き来しながら、馬に魅せられた競馬中継の実況アナウンサーが、愛する馬「シヲカクウマ」の馬主の話に耳を傾けるという形で進行する。ある日、競走馬の登録馬名の文字数制限が9文字から10文字に変更されるというニュースを目にした私(アナウンサー)の思考は飛躍する。今のような人間にしたのは馬であり、人間が馬に乗らなければ、人間は自分の足以外の方法で陸上を移動することはなかっただろうと。ひいては人間が創造した万象すべてが馬の意志によってそうさせられたものなのだと。しかし、人間は言葉に支配されながら、欲望と共に人間優位である錯覚に陥ってしまった。そう危惧した私は、馬と人の歴史を聞くことにするのだった。馬の名前の文字数から、これほどの物語に膨らませていった作者の想像力に圧倒されるばかり。魔術師のように言葉を操りながら、最後まで読者を翻弄(ほんろう)する。