なんて素敵にジャパネスク
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- ¥520
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発行者による作品情報
時は平安――京の都でも一、二を争う名門貴族の娘である瑠璃姫は十六歳。初恋の相手・吉野君の面影を胸に抱いて独身主義を貫く決心をしていた。だが、世間体を気にする父親は、結婚適齢期をとっくに過ぎた娘にうるさく結婚を勧めてくる。ついにある夜、父親の陰謀によって権少将と無理やり結婚させられることに!? 絶体絶命の危機を救ってくれたのは、筒井筒の仲である高彬だったが…!
APPLE BOOKSのレビュー
ライトノベルの開祖と称される、氷室冴子が1981年から発表したラブコメディ『なんて素敵にジャパネスク』シリーズの第1巻。平安時代の貴族社会が舞台でありながら、スピーディな展開とリズム感のある文体に読者が胸を躍らせた少女小説の傑作だ。平安の社会風俗の分かりやすい描写と解説だけでなく、『源氏物語』や『枕草子』など古典文学のパロディもあり、古文への扉を広げる入門書的存在としても重宝された。「結婚が女の幸せとは思えない」と考えているじゃじゃ馬な瑠璃姫は、16歳の誕生日を迎えた途端に「女子の幸せは、よき殿方を通わせてこそ」と、しびれを切らした父や周囲がやいのやいのと口を出してくるのに抵抗する日々。豊かな想像力で幼なじみの高彬との初夜を妄想したり、すさまじい行動力で宮中トラブルを解決してと、ハチャメチャな瑠璃姫のエピソードに引き込まれる。当時、人々が思いを伝えるために交わした和歌がたびたび登場するのだが、氷室による裏メッセージの解説が分かりやすく、昔も今も人の心は変わらないと気付くだろう。氷室は2008年に51歳で逝去。全10巻で終了したのが惜しい。