ふたりの窓の外
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4.5 • 2件の評価
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- ¥1,700
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発行者による作品情報
自分を裏切った恋人ともうすぐ旅行に出かけるはずだった女、その恋人の代わりに旅に同行することを申し出た男。なぜか承諾してしまった女は、それまで見ず知らずだった男と春の宿で一夜を過ごすことになる――。春の宿、夏の墓参、秋のドライブ、そして冬の宿。火葬場での出会い以来、それぞれの季節に一度ずつしか会うことのなかったふたりの一年を四章仕立てで描いた、絵画のような恋愛小説。『眠れない夜にみる夢は』の著者の新境地的傑作。/【目次】1 花を摘まない/2 流れる浮雲/3 雨は道連れ/4 最初に触れる雪
APPLE BOOKSのレビュー
火葬場で出会った男女の四季を巡る物語。父親を亡くした鳴宮と、婚約者を亡くした藤間。葬儀の場からそれぞれの理由で逃れてきた二人はたまたま出会い、ひょんなことから藤間が婚約者と行くはずだった旅行に、鳴宮と行くことになった。まったくの他人同士のシュールな春旅を始まりに、夏、秋、冬と1泊2日の旅を続ける彼ら。季節の移り変わりとともに、お互いを自分の大切な場所にゆっくり宿していく様が静かに、丁寧に描かれていく。非日常的な場所で出会い、一般的な男女関係とはかけ離れたプロセスをたどっていく鳴宮と藤間の姿は、ぜいたくな余白を持った大人の恋を体現しているようでいて、同時にどこかファンタジックでもある。縮まりそうでなかなか縮まらない距離を測りながら、互いの繊細な感情の機微をそっとなぞりながら、名前のない関係を築いていく彼らを指して、“恋愛”と簡単に呼びたくはない。鳴宮と藤間の名前のない関係を、二人だけの特別な関係をずっと見守りたくなる本作。恋愛小説以上の何かを読んだと思えるような読後感とともに、静かな余韻が広がる。