まろほし銀次捕物帳
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3.9 • 21件の評価
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- ¥440
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発行者による作品情報
岡っ引きにして、一角流十手術に伝わる特殊な小武器“まろほし”の遣い手・銀次は今、咲きほこる紅梅と見紛う痣が花叢のように肌に浮く娘の死骸を目の前にしていた―。先頃から追っている別の事件と同じ筋と直感した銀次は、急ぎ下手人を挙げようと奔走するが、ほとんど手掛かりが得られぬまま、料理屋へ通いで勤めている器量良しの十七、八の町娘たちが次々と失踪してしまう…。シリーズ第一弾。
APPLE BOOKSのレビュー
時代推理小説や剣豪小説で知られる鳥羽亮の長編「まろほし銀次捕物帳」。亡き父の跡を継ぎ、岡っ引きになった銀次が、失踪した若い町娘たちの行方を追って江戸を駆けめぐる姿を描く。まろほしとは刀を受けるだけでなく、相手を突くことができる武器のこと。名手だった父の手ほどきを受けた銀次は、そのまろほしを手に欲望にとらわれた悪人たちに立ち向かっていく。著者は1990年、推理作家の登竜門である江戸川乱歩賞を受賞し、デビュー。その後、時代小説へと活動の場を移し、数々の人気シリーズを生み出してきた。なかでも、宮本武蔵や柳生十兵衛ら実在の剣豪をはじめ、架空の人物が活躍するヒーローものを得意とする。銀次は端正な容姿の持ち主で、女性に対しては常に冷静。だが、その胸の内には熱い正義感とやさしさを秘めている。魅力的な人物造形は鳥羽の真骨頂だ。さらに、義理人情や観世懲悪といった日本人が好む筋に加え、剣道有段者ならではの視点で描く緻密な剣術の描写など、時代小説の醍醐味を堪能できる作品が多い。本作ではそれらの要素に加え、まろほしを使った刀での殺陣とは一味違った小気味よい立ち回りが鮮烈で、新味のある捕物帳として楽しめる。