



もう、聞こえない
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3.9 • 23件の評価
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- ¥1,600
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発行者による作品情報
「女の人の声が聞こえるんです」。
殺人の罪を認め、素直に聴取に応じていた被疑者が呟いた。
これは要精神鑑定案件か、それともーー。
身元不明の男性が殺害された。
加害者が自ら一一〇番通報し、自首に近い形で逮捕される。
これで、一件落着。
自分の出る幕はない、と警部補・武脇元は思っていたが……。
事件の真相に、あなたは辿り着くことができるか。
伏線に次ぐ伏線が織りなす衝撃のミステリー。
APPLE BOOKSのレビュー
『ストロベリーナイト』などの警察小説で知られる誉田哲也が仕掛けた異色のミステリー。傷害致死事件の被疑者を取り調べる刑事と、青春時代の親友への思いを回想する女。2人が語る話はどう交わるのか? 警視庁捜査一課の武脇警部補は高井戸署から取り調べの協力を要請される。自ら警察に通報し、犯行を認めているにもかかわらず、傷害致死容疑の女性、中西雪実は死亡した被害者男性との関係を語らないというのだ。取り調べを始めた武脇に雪実は「女の人の声が、聞こえるんです」と言い出す。それからさかのぼること14年前。「ゆったん」と呼ばれる私は、バスケ部で活躍していた親友、美波の人生の転落をなすすべもなく見ていた…。中年男が主役の警察小説と、女性が主人公の青春小説を一冊の中に同居させるという作者の手腕が光る。雑誌記者が事件の真相に迫る取材の過程を描く小説としても秀逸だが、何と言っても90年代に大ヒットしたあるアメリカ映画を思わせる大胆な設定に驚愕(きょうがく)。姫川玲子シリーズへの目配せとして、『ストロベリーナイト』の劇中人物が登場するのも面白い。作者が持てる技量をたっぷり注ぎ込んだ快作エンターテインメント。