れくいえむ
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5.0 • 2件の評価
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- ¥440
発行者による作品情報
死への道はあまりにも近く、生への道はあまりにも遠い……あの太平洋戦争のさなか、ひたすら“立派な軍国少女”になろうと努めた女学生の青春がここにある。激しい空襲をうけ、次々にかけがえのない肉親や友人を失いながら、なお「お国のため、戦争に勝つため」に生きた主人公、大泉節子。彼女の努力の行きつく先は、結局愛をも美をも滅ぼしつくすことでしかない。そのひたむきな純粋さ、無残さが読者の心を深くとらえた芥川賞受賞作。
APPLE BOOKSのレビュー
第68回(1972年下半期)芥川賞受賞作。デビュー作で芥川賞に輝いた、鮮烈で痛みを伴う青春小説。第二次大戦下、軍国少女として国のためにまい進してきた女学生が、終戦直後の防空壕の中で最期の時を迎える。思い出されるのは、戦火の中で散っていった兄や両親など、身近な人々との日々。そして、友人であった一人の少女との手紙のやりとりが、自身にとってかけがえのないものだったと気付く。防空壕の湿気まで感じられるような詳細な描写をはじめ、人々との会話や衣服、食べ物まで臨場感たっぷり。淡々と続く回想シーンの中に、戦時下で生きた人々の悲哀が満ちている。主人公である節子と共に、最前線の兵士たちとは違った、銃後の日本の現実を追体験する。実際に少女時代に戦争を体験した著者による1972年の作品でありながら、戦争を知らない若い世代も共感できる普遍性がある。誰が正しかったのか、間違っていたのかではなく、ただ戦争という間違いが人々の人生と国の命運を狂わせたことが分かる、後世まで読み継いでいくべき傑作。