アサイラム
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- ¥2,000
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発行者による作品情報
大学生の時に友人からの性暴力にあったスミレ。
限界に達した心を抱え、困難な状況にある人たちをケアする街に辿り着く――。
『消えない月』『神さまを待っている』『若葉荘の暮らし』、
現代女性の寄る辺なさに真摯に向き合い、そっと軽くする――著者最新作!
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「それぞれに過去はあって、これからどう生きていくのか悩んで、
闘っていることはわかるから、気にせずに自分のことだけ考えていればいいの」
大学生の頃、自分のことを好きだという友人から性暴力を受けたスミレ。
忌まわしい記憶を胸中に押し込めながら社会人として過ごしていたが、久しぶりに会った女友達から、
彼が当時のことを美しい思い出として吹聴していたことを聞いて、何もできなくなってしまう。
行政がケアを目的に作り上げた街で暮らすことになり、
いじめや虐待など、暴力を受けてきた人々と関わりながら、自分はどう生きていくのか、模索していくが――。
人の心は、あまりにも繊細で複雑だ。
痛みと再生を真っ向からとらえた物語。
APPLE BOOKSのレビュー
“アサイラム”という言葉には、亡命、保護施設、避難所という意味がある。この作品は、大学時代に性加害を受けた主人公が、さまざまな理由で被害者になった人々をケアする街で、もう一度自分の足で立とうとする再生の物語だ。いじめや家庭内暴力、性加害や育児放棄などで普通の生活が難しくなった人々が集まって暮らす街が舞台となっている。スミレもまた、大学時代に自分を好きだという同級生から性加害を受け、ある日を境に日常生活を送ることが難しくなったことで、この街に越してきた。親からDVを受け、火事でその両親を失った雪下くん、ひどい性暴力を受けた留美ちゃん、育児放棄を受けたココアちゃん。加害行為は、その人たちの人生だけでなく、その人自身をも壊してしまう。大きな傷を負った彼らは、守られた街の中で、それぞれ違う傷を持つ他者と少しずつ関わりながら生きていく。痛みを抱えながら生きなくてはならない事実は消えないけれど、それでも再生できるように足を踏み出す姿に、涙があふれてしまう。