ギデオン・マック牧師の数奇な生涯
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- ¥3,400
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発行者による作品情報
スコットランドの出版社に、半年前に失踪したギデオン・マック牧師の手記が持ち込まれた。彼は実直な人間として知られていたが、失踪する直前に、神を信じないまま牧師になったことや悪魔と親しく語らったことを告白し、教区の信徒たちから非難されていた。手記には彼の生い立ちから、自分以外には見えない立石を発見したことや悪魔との出会い、そしてなぜそれを大衆の前で語ったのかがすべて記されていた。――出版者による序文、マック牧師の手記、そしてまた出版者が執筆したエピローグという独特の構成で描かれる、一人の牧師の数奇な生涯。スコットランドを代表する作家が、歴史、風俗、伝説、父子の物語などさまざまな要素を織り込んで綴ったブッカー賞候補作。
APPLE BOOKSのレビュー
聖職者でありながら人々の前で悪魔との邂逅(かいこう)を告白し、直後に不審な死を遂げた牧師、ギデオン・マック。住人を混乱に陥れた奇妙な事件の真相を、彼が残した自伝的な手記をもとに解き明かしていく小説「ギデオン・マック牧師の数奇な生涯」。著者は1990年代初頭から活躍するスコットランドの作家、ジェームズ・ロバートソン。感情を失ったまま育った少年期、父親との確執、妻との離婚など、人生の軌跡が丁寧につづられ、読み進めるうちにその人間性がリアルに読者の頭の中に描き出されていく。ストーリーは彼自身の独白のみならず、騒動を追うジャーナリストや、手記の書籍化を目論む出版人などの視点も織り交ぜて重層的に進行。語り部によって異なる側面を見せる事件の全貌は最後までベールに包まれ、ミステリアスな展開に想像力が刺激される。敬虔な聖職者に見えた男がなぜ神に背く行為に走ったのか、そして彼が語る悪魔の正体とは何か。大いなる謎が明かされていくサスペンスとしても秀逸であるが、本書に散りばめられた宗教、道徳、罪、家族といった深遠なテーマが、重厚な文学作品としての魅力も高めている。