ゲルマニウムの夜 王国記 I
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3.4 • 8件の評価
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発行者による作品情報
街で人を殺し、身を隠すため、自分が育った古巣の修道院兼教護院に舞い戻った青年・朧(ろう)。その修道院でもなお、修道女を犯し、神父に性の奉仕をし、暴力の衝動に身を任せて教護院の少年たちや動物に鉄拳をふるい、冒涜の限りを尽くす。あらゆる汚辱を身にまとう──もしや、それこそ現代では「神」に最も近く在る道なのだろうか? 世紀末の虚無の中、〈神の子〉は暴走する。目指すは、僕の王国! 第119回芥川賞を受賞した戦慄の問題作にして、「王国記」シリーズ第一作。
APPLE BOOKSのレビュー
第119回(1998年上半期)芥川賞受賞作。過激な作風で知られる著者が、自身のキリスト教系養護学校での経験を踏まえてつづった、耽美で痛々しく、純粋で生々しく、残酷で荒々しい青春小説。無軌道に罪を犯し、一度は逃げ出した修道院に戻ってからも、キリスト教の教えどころか、人の道にさえ背き続ける主人公の朧。しかし、神の名の下に少年たちを虐待する神父、理不尽なことさえも受け入れてしまう修道女、煩悩まみれの仲間たちなど、朧を救済すべき世界そのものが壊れていることがさらなる絶望を生む。そして朧は、自身が神となり自分の王国を築くことを目指していく。宗教の偽りを暴きながら、それでも人々を救済する宗教というものの在り方を問い、その後『王国記』シリーズとして広がっていく壮大な叙事詩の第1作。本書のみでも傑作だが、登場する人や物の息遣いや匂い、質感、温度まで感じられるようなとげとげしい描写の数々が、身にまとわりつくような余韻を残し、彼らのその後の展開に強く引かれる。