サイバー・ショーグン・レボリューション ‪上‬

APPLE BOOKSのレビュー

第2次世界大戦で枢軸国側が勝っていたら？という歴史改変SFシリーズの第3弾。日本とドイツが北アメリカを東西に分割統治している驚愕（きょうがく）の世界。皇国史観の残る大日本帝国と、ファシズムがさらに加速したナチス。腐敗した上層部を倒し、ゆがんだ冷戦構造からの脱却を目指して革命に身を投じたヒロインが、両国にまたがる巨大な陰謀に巻き込まれていく。設定はフィリップ・K・ディックの『高い城の男』を踏襲したといえるが、日本のアニメやゲームから影響を受けたという、筆者のキッチュな仕掛けが満載。戦時中の思想が継承される一方で、時代が進んだことによるガジェット、とりわけ巨大ロボット兵器の「メカ」によるバトルシーンは迫力満点。女性軍人の活躍も未来的といえる。『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』そして『メカ・サムライ・エンパイア』に続くシリーズ3作目として同じ世界、時間軸で描きながら、独立したエピソードとなっており、前作を読んでいなくても十分楽しめる。一方でシリーズファンには、ますますこの世界にはまっていくシーンがちりばめられている。本作で完結とされているが、この世界に生きる別の主人公が生まれるような空想がさらに広がる。