シュレーディンガーの少女
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3.3 • 4件の評価
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- ¥950
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発行者による作品情報
BMIを理由に会社を解雇された主人公の元に、政府からダイエット企画の参加者に選ばれたという通知が届く。それは“敗者は死なねばならない”というルールのデスゲームだった(「太っていたらだめですか?」)。すべての人は例外なく、65歳の誕生日を迎える前後で死ぬ。64歳になった紫は、人生の目標をほぼ達成していたが、スリの子どもから被害に遭いかけ、追いかけていったすえにその子を手元に引き取ることに……(「六十五歳デス」)。さまざまなディストピア世界を生きのびる、パワフルで勇敢な女性たちの物語。あとがきに自作解説を含む。/【目次】六十五歳デス/太っていたらだめですか?/異世界数学/秋刀魚、苦いかしょっぱいか/ペンローズの乙女/シュレーディンガーの少女/著者あとがき
APPLE BOOKSのレビュー
ディストピアに生きる女性を描く六つのSF短編集『シュレーディンガーの少女』。2010年にSF短編『あがり』が認められ、作家デビューした理学部出身の松崎有理。アイデアSFの名手として多数の短編を発表してきたが、2019年に発表した『イヴの末裔たちの明日』収録作「方舟の座席」で初めて女性を主人公にしたところ、新しい世界が広がったという。巻頭の「六十五歳デス」はどんな人間も一律に寿命が課せられた社会が舞台。他に、健康至上主義の社会や、数学が禁止された国、サンマが幻の魚となった未来など、一風変わったディストピアで女性たちが試練に立ち向かう姿が描かれる。“シュレーディンガー”にピンと来た人なら、5話目の「ペンローズの乙女」に登場する“ドレイク方程式”、“超大質量回転ブラックホール”や、最後を飾る表題作のキーワード“モラヴェック”といった言葉から、松崎の世界観に共鳴できるだろう。後半になるほど理系の要素が強くなるが、エンターテインメントとのバランスが絶妙。希望のあるラストもいい。