



シンプルな情熱
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- ¥880
発行者による作品情報
年下男性との愛の体験を赤裸々に綴り衝撃を呼んだ、 ベストセラー小説 「昨年の九月以降わたしは、ある男性を待つこと──彼が電話をかけてくるのを、そして家へ訪ねてくるのを待つこと以外何ひとつしなくなった」離婚後独身でパリに暮らす女性教師が、妻子ある若い東欧の外交官と不倫の関係に。彼だけのことを思い、逢えばどこでも熱く抱擁する。その情熱はロマンチシズムからはほど遠い、激しく単純で肉体的なものだった。自分自身の体験を赤裸々に語り、大反響を呼んだ、衝撃の問題作。
APPLE BOOKSのレビュー
2022年にノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーによる、フランス文壇を二分した問題作。その作品のほとんどが自伝的であるとされるエルノー。本作は年下の外国人外交官とのシンプルで「情熱的」な肉体関係を内省と共につづった記録となっている。「彼」につながる物事以外は何も知性を働かせられず、惰性で生きているほどの情熱。会えずにいる時にはその喜びを失うのではないかという不安につきまとわれ、いっそ手放してしまいたいと思いながらもすがりついてしまう情熱。そして嵐のような感情が過ぎ去った後の、無のような状態から自分を取り戻していく過程までもを赤裸裸に語る。ここに描かれているのはロマンチックな恋や、丁寧に関係性を積み重ねていくような愛とは程遠い、動物的とも言っていいほどの衝動的な性愛だ。その一方で、熱に突き動かされる私を静かに見つめている私、という対比が作品に深みを与えている。恋愛至上主義とも言われるフランスで圧倒的な支持を得た物語。そこに自らの恋愛体験を重ねるとき、彼女の物語は私たちの物語へと変わっていくのだろう。