スクラップ・アンド・ビルド
-
-
2.9 • 21件の評価
-
-
- ¥590
発行者による作品情報
「じいちゃんなんて、早う死んだらよか」。
ぼやく祖父の願いをかなえようと、孫の健斗はある計画を思いつく。自らの肉体を筋トレで鍛え上げ、転職のために面接に臨む日々。
人生を再構築していく中で、健斗は祖父との共生を通して次第に変化していく――。
瑞々しさと可笑しみ漂う筆致で、青年の稚気と老人の狡猾さを描ききった、羽田圭介の代表作。
新しい家族小説の誕生を告げた第153回芥川賞受賞作が待望の文庫化!
APPLE BOOKSのレビュー
第153回(2015年上半期)芥川賞受賞作。カーディーラーを退社後、求職中の身である28歳の健斗は、実家で母と祖父と3人で暮らしている。現代医学でも和らげようのない苦痛を背負いながら、診断上は健康体であるとされ、今後しばらく生き続けることを保証されている87歳の祖父の口癖は「早う迎えにきてほしか」。母は介護のストレスから祖父に対して非情とも思える態度で接しているが、その実、自立支援のために祖父が自分でできることは自分でやらせようとしている。一方、健斗は祖父の魂の叫びを聞き流してきたという反省から、祖父の願いをかなえ尊厳死を迎えさせるため、優しい介護で祖父を弱らせるという方法を思い付く。自らの肉体を極限まで痛めつけるような筋トレを愚直なまでに繰り返しながら、体だけではなく人生、そして祖父に対する見方を再構築していく健斗と、死を目前になすすべがない鬱屈(うっくつ)を抱え、際限のない甘えと悪賢さを併せ持つ祖父の姿をシニカルかつユーモラスに描く。誰もが通るであろう“老い”と、スクラップ・アンド・ビルド(廃棄と再建)という題名が示すものについて、考えさせられる。