トロッコ
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4.2 • 394件の評価
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発行者による作品情報
主人公は、トロッコに憧れる8歳の少年、良平。小田原と熱海を結ぶ鉄道工事現場に、毎日のように通う良平に、ある日、トロッコを押すチャンスがめぐってくる。2人の職工と共に憧れのトロッコに乗り、有頂天の良平。ところが夢のような時間はあっという間に過ぎ、日が暮れかける中、ひとりで帰るようにと置き去りにされてしまう。ひとりぼっちの帰り道、少年の心を襲う恐怖と孤独。そんな思い出を26歳の大人になった良平に教えてくれるものとは……。大人の世界を垣間見た少年の不安を描きながら、人生そのものを暗示するノスタルジー溢れる短篇小説。出版社で働く雑誌記者の回想に着想を得た芥川が、一晩で書き上げたと言われる。舞台をいまもトロッコ軌道の残る台湾の花蓮県に変えて、2009年に映画化された。
APPLE BOOKSのレビュー
1922年(大正11年)に芥川龍之介が発表した名作短編小説。舞台は小田原熱海間の軽便鉄道敷設工事現場。そこで使われていたトロッコにひどく魅了された8歳の良平は、弟たちと共にトロッコで遊んでいたが、工事現場の人に怒られてしまう。それから10日余りたったある日の午後、作業員の2人に話しかけた良平は念願のトロッコに乗せてもらえることに。しかし、最初は楽しかったものの、少しずつ離れていく故郷への不安が募り、途中で降りることになってしまった良平は、薄暗くなった元来た道をたった一人で戻らなければならなかった。孤独と不安と恐怖でいっぱいになりながら、必死に家路に走った後、母の抱擁に安堵(あんど)し、涙してしまう。そんな、少年の頃の強烈な記憶がよみがえった彼だったが、大人になった今も「塵労に疲れた彼の前には今でもやはりその時のように、薄暗い藪や坂のある路が、細細と一すじ断続している」のだった。幼いころの強烈な記憶と、大人になった今置かれている状況を重ね合わせ、人生の本質を描き出す。2009年に、本作をモチーフにした映画も製作された。
カスタマーレビュー
人生のメタファー
尾野真千子さんの映画を観て、この原作に興味がわいた。
最後までただ無邪気な絵本のような小説かと思いきや、最終盤に文学になるところは、さすが芥川の腕前。
一気に時が流れることで、少年時代の思い出が普遍性を帯びる。あの日のトロッコ遊びとは、いったい何だったのか...
これが素晴らしく喚起的で色んな解釈ができる。
楽しく遊んだら、そのぶん代償を払わねばならない。
この資本主義社会では当たり前のリアリズムが、この物語を通すと非常に痛切に感じさせられる。
資本主義が続く限り、誰にとってもこの少年のような号泣をへて、イノセンスを失うのだろう。
私には2時間の映画よりも、たった8ページのこの短編の方が、味わい深いものとなった。
最後に来て、好きなだけ遊べる世界への憧れを喚起させられた。
なんでもない日常
忘れてた幼少期の記憶を思い出す。
ふとした軽い気持ちで巻き起こる大冒険。
大人にとって大したことなくても子供にとってはすごい大きなことだったりするんだよやー。
自分にとっては小さなことでも誰かにとっては大きなこと。真剣に人と付き合おうと自戒
さすがです
暮れかかる道を必死に走る、自分にも覚えがある。そして今も、その心境にある。それをキリリと書き切っているのは、さすが。