ハイ・ライズ
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発行者による作品情報
【映画化原作】ロンドン中心部に聳え立つ、知的専門職の人々が暮らす、新築の40階建の巨大住宅。1000戸2000人を擁し、マーケット、プール、ジム、レストランから、銀行、小学校までを備えたこの一個の世界は事実上、10階までの下層部、35階までの中層部、その上の最上部に階層化されていた。その全室が入居済みとなり、ある夜起こった停電をきっかけに、建物全体を不穏な空気が支配しはじめた。3カ月にわたる異常状況を、中層部の医師、下層部のテレビ・プロデューサー、最上層の40階に住むこのマンションの設計者が交互に語る。バラード中期の傑作。/解説=渡邊利道
APPLE BOOKSのレビュー
20世紀イギリス文学界を代表するSF作家、J.G.バラードが1975年に発表した小説「ハイ・ライズ」。設備が完璧に整った高層住宅で暮らす人々が、やがて自ら作り出した閉鎖空間の中に囚われ、変容してゆく様が緻密に描かれる。著者は1970年代に、科学技術によって生み出された環境の中で暴走する人々の欲望をモチーフとした作品を多く発表しているが、特に本作は各階層の代表格的な3人の当事者視点で、階層社会の様相と崩壊を明らかにしてゆく点が特徴的。作品が発表された当時のイギリスは、戦後以来の高層マンション建築ブームの中にあったが、それでも40階建てマンションはあくまでも想像上のものであったはず。それでも時代のギャップを感じさせることなく、むしろよりリアルに物語のおぞましさを伝えるバラードの、先見の明とストーリーテラーとしての力量は、まさに巨匠と呼ばれるにふさわしい。