プラスティック
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発行者による作品情報
54個の文書ファイルが収められたフロッピイがある。冒頭の文書に記録されていたのは、出張中の夫の帰りを待つ間に奇妙な出来事に遭遇した主婦・向井洵子が書きこんだ日記だった。その日記こそが、アイデンティティーをきしませ崩壊させる導火線となる! 謎が謎を呼ぶ深遠な井上ワールドの傑作ミステリー。(講談社文庫)
APPLE BOOKSのレビュー
54個の文書ファイルが収められたフロッピーディスク。記録されていたのは、出張中の夫の帰りを待つ間に奇妙な出来事に遭遇した主婦、向井洵子が書いた日記だった。その日記で、向井洵子は自分をかたる別の人間の存在を示唆している。だが、その向井洵子本人が、惨殺死体となって発見される…。徳山諄一との共作筆名である岡嶋二人の名義で『焦茶色のパステル』『チョコレートゲーム』『99%の誘拐』など数々の傑作ミステリーを手掛け、コンビ解消後はホラーやSFの要素を盛り込んだ独自のミステリーを開拓し続ける井上夢人。本作も謎が謎を呼ぶ展開と、不穏な空気感に満ちた物語の顚末(てんまつ)をいち早く確かめたくて、ページをめくる手が止まらなくなる。驚くべきはこの物語が1990年代半ばに書かれたものであるということ。時代の変遷を経ても色あせない衝撃的な内容は、世代を超えてミステリーファンを魅了することだろう。行間から読み手を不可解な異空間へと誘う著者の文体は非常に映像的でありながら、同時に小説でしか成し得ない世界を紡ぎ出している。