プラナリア
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3.9 • 47件の評価
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- ¥520
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発行者による作品情報
「何もかもが面倒くさかった。生きていること自体が面倒くさかったが、自分で死ぬのも面倒くさかった。だったら、もう病院なんか行かずに、がん再発で死ねばいいんじゃないかなとも思うが、正直言ってそれが一番恐かった。矛盾している。私は矛盾している自分に疲れ果てた。」(本文より)乳ガンの手術以来、25歳の春香は、周囲に気遣われても、ひたすらかったるい自分を持て余し……〈働かないこと〉をめぐる珠玉の5短篇。絶大な支持を得る山本文緒の、直木賞受賞作!
APPLE BOOKSのレビュー
第124回(2000年下半期)直木賞受賞作。人生の迷路に一喜一憂しながらも、自分の進む道を探そうとしている人々を描いた5編の物語を収めている。乳がんで右胸を手術で取った主人公が、生まれ変わったら不死身の生命力を持つ無脊椎動物のプラナリアになりたいと願いつつ鬱屈(うっくつ)した日々を送る「プラナリア」。夫に離婚されて、職まで失ってしまった36歳の刹那的な夏を描く「ネイキッド」。学生の彼氏から乗り気ではないプロポーズを受けた主人公が囚人のジレンマの考察とともに結婚を考える「囚われ人のジレンマ」。どこかにありそうで、少しだけひねくれた誰かの物語は、ヒリヒリとした痛みを伴いながらもほんのりと光を感じさせる。目を背けてはいけない社会問題をすくい上げ、鋭い切り口で描く作者の作品の中でも、今作は主人公たちの心の機微から現代社会の生きづらさを描いている。