



マリエ
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4.3 • 7件の評価
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- ¥1,800
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発行者による作品情報
私の幸も不幸も、私が決める。そう、決めた
40歳目前に離婚した桐原まりえは、寂しさよりも清々しさを感じていた。新直木賞作家が描く、おとなの女性の幸福と結婚を巡る物語。
『マリエ』は、『しろがねの葉』で第168回直木賞を受賞されたのが記憶に新しい千早茜さんの最新長篇です。
物語は、主人公の「桐原まりえ」が40歳を目前に離婚したところから始まります。離婚理由には納得がいかないものの、もう誰にも属していない、という軽やかさを感じているまりえ。すべて自分の自由にできる生活が一番大事でそれを危うくする欲望、たとえば恋愛などに呑み込まれたくはない。でも、なにか不安で、なにか取りこぼしている気も……。
ひょんなことで懐いてきた由井君のことは好ましいのだが、折に触れ、7つの歳の差を感じるばかり。そんな折、些細なきっかけと少しの興味から、まりえは結婚相談所に登録します。そこで彼女は、切実な「現実」や結婚に対する思いもよらない価値観を次々と突きつけられるのです。
千早さんは本作を、「生き方」の小説、と話されます。その言葉通り、これまでの千早作品のなかでもっとも著者に近いと言える主人公が、等身大で挑む日常の「冒険」には抜群のリアリティがあります。無防備に新しいことに飛び込んでいける年齢を過ぎて、仕事も落ち着き、結婚生活もリセットされ、コロナ禍に価値観を揺さぶられ……そんな「今」の生き方を問う意欲作です。
考え続けるまりえの軌跡を共に歩めば、きっと、「自分が今後の人生に求める幸せ」の輪郭が見えてくることでしょう。
APPLE BOOKSのレビュー
40歳を前に離婚した女性の幸せを巡る緩やかな日常をみずみずしく描いた『マリエ』。『しろがねの葉』で第168回直木賞を受賞した千早茜の長編作品。「恋愛がしたい」、そう夫に切り出された桐原まりえは、40歳を目前に離婚した。離婚届を出したけれど、寂しさよりもすがすがしさを感じている自分に少し驚きながらも、一人の生活はなんだか軽やかで、とても自由だ。この日々のバランスが崩れてしまうような恋愛は今はいい、そう思っていたときに7歳年下の男性、由井君と出会ってしまう。週末、自宅で料理を教える関係が心地よいけれど、その先は…。友人の話から興味本位で登録してしまった結婚相談所、元夫からの変わらない連絡、結婚相談所で知り合った結婚に切実な面々、ひょうひょうと生きる親世代の友人マキさん。日々の出来事や出会う人々の価値観に触れながら、まりえ自身の幸せの形を見つめ直していく。人の数だけ価値観がある。どんな生き方も間違いではない。「私の幸も不幸も、私が決める」というまりえの決心は、読者の心をも晴れやかにしてくれる。