



ミカエルの鼓動
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4.3 • 10件の評価
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発行者による作品情報
ぶつかり合う二人の医師の志。命を救えるのはどちらの正義か
大学病院で、手術支援ロボット「ミカエル」を推進する心臓外科医・西條。そこへ、ドイツ帰りの天才医師・真木が現れ、西條の目の前で「ミカエル」を用いない手術を、とてつもない速さで完遂する。
あるとき、難病の少年の治療方針をめぐって、二人は対立。
「ミカエル」を用いた最先端医療か、従来の術式による開胸手術か。
そんな中、西條を慕っていた若手医師が、自らの命を絶った。
大学病院の暗部を暴こうとする記者が、「ミカエルは人を救う天使じゃない。偽物だ」と西條に迫る。
二人の医師の「志」がぶつかり合い、大学病院の闇が浮かび上がる。
命を救うための、正義とは――。
気鋭の著者が、医療の在り方、命の意味を問う感動巨編。
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単行本2021年10月文藝春秋刊
文庫版2024年10月文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
APPLE BOOKSのレビュー
『孤狼の血』でヤクザの抗争、『盤上の向日葵』で将棋界を描いた柚月裕子が医療小説に挑み、医療のあるべき姿を問いかけた第166回直木賞候補作。北海道の大学病院で医療支援ロボット「ミカエル」を駆使して次々と難手術を成功させる心臓外科医、西條。やり手の病院長、曾我部からの信頼も厚い西條は、病院の看板医師としてロボット支援下の手術を推進している。だが、そこにドイツ帰りの医師、真木が現れる。ロボットを用いず、従来の開胸式手術を驚くべき速さで完遂する真木を招聘(しょうへい)した曾我部の思惑は何なのか。先天性疾患を抱える少年の心臓弁の手術を巡って真木と激しく対立した西條は、他の病院でミカエルを使用していた医師の自殺を知り、疑惑を募らせる…。病院内の権力闘争など、組織の闇を描き出すのはお手の物の作者だが、医療の現場を描写する筆致はそれ以上。ミカエルを使うのか否か、人工弁置換か再度の弁形成術か。二人の天才心臓外科医が治療方針でぶつかりながら、互いの技量を認め合い、医師の使命を果たす心臓弁手術の描写は緊迫感にあふれている。猛吹雪の旭岳や向日葵が咲く広大な丘など、生を求める命の気高さを象徴した北海道の大自然も胸を打つ感動作。