リアルアカウント(1‪)‬

APPLE BOOKSのレビュー

2004年のデビュー以来、仮想現実がテーマの作品や学園ファンタジー作品を多く手掛けてきたマンガ家・渡辺静による作品「リアルアカウント(1)」。国民的SNS（ソーシャルネットワーキングサービス）の世界にネット中毒の主人公ら1万人が吸い込まれ、生き残りをかけたゲームに巻き込まれていく。閉鎖空間におけるサバイバルをテーマにした作品は少なくないが、SNSの仕組みや、人間模様を絡めながらテンポよく進んでいくストーリーは斬新。架空のSNSを舞台に繰り広げられる「フォロワー0人で即死亡」といった展開も、SNSに親しむ読者には強い感情移入を促す。ネット炎上のメカニズムや、SNSで自分を偽りながら生きる人々の心理、気薄な人間関係などが生存競争のヒントになるあたりは今日的で、ネットユーザー特有の心理を踏まえた展開も現代人には共感しやすい。ゲームの支配者によって次々と命が失われていくストーリーながら物語が殺伐としないのは、理不尽な状況であっても常に人を信じ、希望を見いだそうとする登場人物たちの意思が随所に感じられるからだろう。生き残りをかけた無情な世界の中で、本当に大切なものは何なのか。主人公の心の動きに注目して欲しい。