ヴィーヴル洋裁店~キヌヨとハリエット~(1‪)‬

APPLE BOOKSのレビュー

一生着られるお気に入りの服を、あなたは持っているだろうか。和田隆志が描く「ヴィーヴル洋裁店~キヌヨとハリエット~」は、ファンタジー世界の洋裁店が舞台の物語。主人公のキヌヨと相棒のハリネズミであるハリエットは、マダムという名で慕われた祖母が営んでいた洋裁店を受け継ぐが、時代にそぐわないオートクチュールでの経営に悩んでいた。キヌヨならではの革新的なアイデアは、訪れた人の悩みを解消し、祖母にも負けない素晴らしい服を生み出していくのだが、お店を立て直すために2人が王室向けの衣装に挑もうとすると、さらなる難題が持ち上がる。ドラゴンの革、ユニコーンの角、オリハルコンの粉末といったファンタジックな素材が作中に登場し、そのユニークな特徴や加工法こそが本作の持ち味。時代に合わせるのではなく、その人に寄り添った服を目指すキヌヨの信念。小さくも偉大な彼女の洋裁店がどうなるのか、その続きが気になる一作。