万事快調〈オール・グリーンズ‪〉‬

APPLE BOOKSのレビュー

北関東の片田舎から抜け出そうともがく女子高校生たちのワイルドな日々を、軽快なタッチで描く。1999年生まれの現役大学生、波木銅によるデビュー作。朴秀実は茨城県の工業高校に通う女子高校生。読書家で、校外ではフリースタイルのラップにいそしんでいる。朴同様、スクールカーストの底辺にいる岩隈真子は、少女マンガ好きで毒舌家。一方、有望な陸上選手ながら映画マニアでもある矢口美流紅は、うまくクラスに溶け込んでいる。クラスに3人しかいない女子は特に親しいわけではなかったが、朴がひょんなことから大麻の種子を入手し、2人に声をかけて園芸同好会を結成。学校の屋上でマリファナを栽培して売りさばく計画を立てるが…。何の希望もない片田舎から抜け出すため、一獲千金を狙って犯罪に手を染める3人の女子高校生。バイオレンスな展開もあるが、小説や映画、音楽、マンガからの引用を随所にちりばめ、乾いたユーモアで彩った文体が特徴的。疾走感にあふれ、妙な爽やかささえ感じさせる。過剰な自意識を持て余す10代の日々を活写したキケンな青春小説だ。