上‪海‬

利害の充満する街

当時台頭していたプロレタリア文学に対し、新感覚派の大将、横光が満を持して送り出したキャリア初期の集大成。表題にもある上海を舞台に繰り広げられる男女の愛憎劇、さらにそれと同時並行する排外運動の緊迫感が、作者の象徴的かつ、瑞々しい文体によって当時の共同租界の空気感を伝えている。様々な人種、思想、感情がぶつかり合いながら、ついに五・三〇事件となるその原因とは何だったのか。今なお中国社会の抱える深い病理を問い直す意味でも、是非読み返されるべき作品である。