中国の鳥‪人‬

APPLE BOOKSのレビュー

椎名誠によるちょっと不思議な物語を集めた短編集「中国の鳥人」。中国の奥地へ行くとそこには空を飛ぶ人々が住む少数民族の村があったという、三池崇史監督により映画化もされた表題作の他、全部で8編が収められている。どちらかというと旅のエッセイなどの印象が強い著者だが、作家として非常にユニークな作品を数多く発表している。本作はその中でも、スラップスティックSF、恐怖小説など、幻想的でどこか不条理な味わいを持った異色の作品集。生理的な違和感を与える描写などもあり、ユニークな文体と相まって決して一筋縄ではいかない印象だが、想像しなかった方向へ展開していく物語によって、読み進めるうちにいつしか心地よく裏切られるそんな快感に取り憑かれてゆく。電子書籍化に際し新たに書き下ろされたあとがきも嬉しい。