



乙女の密告
-
-
3.4 • 9件の評価
-
-
- ¥420
-
- ¥420
発行者による作品情報
ある外国語大学で流れた教授と女学生にまつわる黒い噂。乙女達が騒然とするなか、みか子はスピーチコンテストの課題『アンネの日記』のドイツ語のテキストの暗記に懸命になる。そこには、少女時代に読んだときは気づかなかったアンネの心の叫びが記されていた。やがて噂の真相も明らかとなり……。悲劇の少女アンネ・フランクと現代女性の奇跡の邂逅を描く、感動の芥川賞受賞作。
APPLE BOOKSのレビュー
第143回(2010年上半期)芥川賞受賞作。京都の外国語大学に通う“乙女”たちによる、アイデンティティを巡る物語。主人公のみか子をはじめとするドイツ語科の面々は、スピーチコンテストに向けて『アンネの日記』の原文の一部を暗唱することになる。すべての学生が恐れるバッハマン教授の熱血指導の下、みか子たちは血を吐くような猛特訓に励む。そのプレッシャーのあまり、みか子は“スピーチの魔物”に魅入られてしまう。その頃、誰よりも熱心に練習に励んでいた上級生、麗子様とバッハマン教授のうわさが学内に流れ、乙女たちは疑心暗鬼に陥る。迫り来るコンテスト本番に向けて加速する物語はやがて、ナチスに追われるアンネ・フランクの手記と共振し、劇的な展開を見せる。バッハマン教授の型破りな指導が強烈で、テンポよく言葉を連ねる文体も相まって、乙女たちが真剣になればなるほどおかしみが漂う。そして乙女たちがアンネ・フランクの言葉と何度も向き合う中で、その言葉の重みと深みに触れていく過程にはアカデミックな刺激があり、学びの尊さが感じられる。