予感
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Publisher Description
『三田文学』の名編集者であり、芥川賞候補に四度、直木賞候補に一度なるなど、作家としてもその才能を期待されながら、34歳の若さで夭折した山川方夫の不条理の世界を描いたショートショートの傑作。
物語は、バス旅行中の夫婦の何気ない会話から始まる。車窓を流れる風光明媚な景色に楽し気な妻の横で、夫は「このバスは転落するのでは」という予感に心を震わせていた。
そうした予感は、これまでも幾度か彼を苦しめていたのだが、妻はそれを信じてくれない。それどころか、最後には怒り出すこともしばしばだった。
しかし、バスの中で感じる予感への不安は募るばかり。夫はとうとうバスを降りることを決意する。反発する妻を無視するように、夫は運転手に頼み込んで強引に下車してしまう。
大型バスの事故が報じられたのは、その日の夕刊だった。夫婦を待っていた衝撃の結末とは……。
この作品には、昨今では不適切として受け取られる可能性のある表現が含まれますが、当時の時代背景、表現およびオリジナリティを尊重し、そのままの形で作品を公開します。