住みにごり(1‪)‬

APPLE BOOKSのレビュー

29歳の青年と、奇妙な家族の姿を描く新感覚ホームドラマ。会社から長い夏休みをもらい、実家に帰ってきた末吉は、15年間口をきいたことのない35歳無職の兄フミヤが苦手だ。父やほぼ寝たきりの母、パワフルな姉、淡い恋をしていた幼なじみと再会しながら、末吉は家族の過去と現在に向き合っていく。レトロな描線と、独特の不穏な空気感で注目を集める話題作。とにかく印象的なのは「怪物」の一人、フミヤのキャラクターだ。いつも無言だが表情豊かな彼の行動は、一見ギャグのようで笑えるが、不意にホラーのような感覚が顔を出す。少しずつ回想される若き日の両親や、子どもたちの姿にぞくりとするたび、家族の「にごり」の正体を知りたくなるはず。