体はゆく できるを科学する〈テクノロジー×身体〉
-
-
5.0 • 1件の評価
-
-
- ¥1,700
発行者による作品情報
「できなかったことができる」って何だろう?
技能習得のメカニズムからリハビリへの応用まで――
・「あ、こういうことか」意識の外で演奏ができてしまう領域とは
・なぜ桑田真澄選手は投球フォームが違っても結果は同じなのか
・環境に介入して体を「だます」“農業的”テクノロジーの面白さ
・脳波でしっぽを動かす――未知の学習に必要な体性感覚
・「セルフとアザーのグレーゾーン」で生まれるもの ……etc.
古屋晋一(ソニーコンピュータサイエンス研究所)、
柏野牧夫(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)、
小池英樹(東京工業大学)、牛場潤一(慶應義塾大学)、
暦本純一(東京大学大学院)ら、5人の科学者/エンジニアの先端研究を通して
、「できる」をめぐる体の“奔放な”可能性を追う。
日々、未知へとジャンプする“体の冒険”がここに!
APPLE BOOKSのレビュー
「できなかったことができるようになる」とは、どういうことなのか。『記憶する体』などの著書があり、障がいのある人々の身体感覚を研究して高く評価される著者が、最先端の科学者/エンジニアとの対話を通して考える「できる」身体論。手に装着すると難しいピアノ演奏が勝手に再現され、打鍵の感覚を体験できるエクソスケルトン、人間に無いバーチャルなしっぽを脳波で動かす実験、音を出さずにしゃべるインターフェイス、スポーツの現場で試合中にリアルタイムのコーチングを目指す画像合成技術など、テクノロジーと体の関わりはどれも面白い。中でも桑田真澄元投手の投球フォームを計測すると、毎回フォームが異なりながら常に狙い通りの制球となり、しかも本人は同じように投げているつもりだったという話は興味深い。フォームの揺らぎは、環境の変動に対する無意識の応答であり、体が意識的なコントロールの外に出たからこそ、正確な位置に球を投げられるというのだ。自分で完全にコントロールできない体の方が先に新しいことができるようになり、こういうことかと後から意識が付いていく。人間の体の奔放さをテクノロジーが読み解く可能性を追究した良書。