元首の謀叛
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発行者による作品情報
ある日、東ドイツの国境監視塔が轟音とともに崩れ落ちた。一方、ソ連軍や東独軍が不審な動きを見せ始めた。西側への侵攻準備だろうか? 各国の首脳が疑心暗鬼におちいっている間に、一人の東独空軍中尉が、密かに西ドイツに潜入した。彼は東独書記長の親書を西独首相に手渡すという、重大な秘密任務を帯びていた。東独書記長ホーネッカーは、ソ連の圧制からのがれ、東西ドイツの統一を実現するために、驚くべき手段を講じようとしていた。直木賞受賞の傑作国際謀略小説。
APPLE BOOKSのレビュー
第84回(1980年下半期)直木賞受賞作。航空会社に勤務し、海外生活の長い著者がその経験を生かして書いたデビュー作。日本人の登場しない国際謀略小説で直木賞を受賞した。冷戦下で東西に分裂したドイツ。ドイツ民主共和国(東ドイツ)とドイツ連邦共和国(西ドイツ)の国境付近で、東ドイツによる地雷撤去の作業が密かに行われていた。その西側で酒に酔った大学生が迷い込み、地雷が爆発。東ドイツの国境監視塔が崩れ落ちる事態に発展する。東側の地雷撤去は何が目的だったのか。西側が動揺する中、東ドイツ人民軍技術中尉ハンスが西ドイツに潜入した…。アメリカ総領事館の駐在武官レスターによる西側の情報分析と、ハンスの工作活動をカットバックで描くサスペンスフルな展開。国際情勢や国際紛争に関する膨大な情報と知識を駆使し、現実にあり得たかもしれない事態を描く手腕は一流で、『ジャッカルの日』をはじめとしたフレデリック・フォーサイスの作品を彷彿(ほうふつ)させる。東西ドイツの分断により、ある一家の兄弟が東西に分かれ、互いによく似たその息子がそれと知らずに思いがけず出会うのも象徴的。大国の思惑で分断を余儀なくされた敗戦国の悲しみが伝わる傑作。