光抱く友よ
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4.0 • 2件の評価
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- ¥410
発行者による作品情報
大学教授を父親に持つ、引っ込み思案の優等生・相馬涼子。アル中の母親をかかえ、早熟で、すでに女の倦怠感すら漂わせる不良少女・松尾勝美。17歳の二人の女子高生の出会いと別れを通して、初めて人生の「闇」に触れた少女の揺れ動く心を清冽に描く芥川受賞作。他に、母と娘の間に新しい信頼関係が育まれていく様を、娘の長すぎる髪を切るまでの日々のスケッチで綴る「揺れる髪」等2編。
APPLE BOOKSのレビュー
第90回(1983年下半期)芥川賞受賞作。親や先生にそれほど反発することなく育った女子高生の涼子が、周囲から不良と見られている同級生との交流によって、ままならない世の中の深層に気付き始める物語。父親が不在で、酒飲みの母親の下、厳しい現実を生きる同級生の松尾勝美。寂しさの中に毅然(きぜん)とした強さを持つ彼女に涼子の心は引き付けられるが、同時に埋めることのできない隔たりも感じ取ってしまう。憧れやシンパシー、失望など、さまざまな感情で揺れる高校生の胸の内を静かな筆致で描く青春譚は、時がたっても色あせることなく、どこかひんやりとした空気を放っている。表題作の他、自分とは違う気質の娘との関係性に惑う母親の物語「揺れる髪」、婚前の関係性について細やかなやりとりを交わす恋人同士の葛藤を描く「春まだ浅く」の2編を収録。いずれも女性が胸の奥底に隠し持つナイーブな感情にそっと触れるような作品で、落ち着いた語り口の中に秘めた情熱が感じられる。