共喰い
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3.5 • 25件の評価
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発行者による作品情報
一つ年上の幼馴染、千種と付き合う十七歳の遠馬は、父と父の女の琴子と暮らしていた。セックスのときに琴子を殴る父と自分は違うと、自らに言い聞かせる遠馬だったが、やがて内から沸きあがる衝動に戸惑いつつも、次第にそれを抑えきれなくなって─。川辺の田舎町を舞台に起こる、逃げ場のない血と性の問題。第146回芥川賞受賞作。文庫化にあたり、瀬戸内寂聴氏との対談を収録。ほか「第三紀層の魚」併録。
APPLE BOOKSのレビュー
第146回(2011年下半期)芥川賞受賞作。山口県下関市で育ち、工業高校卒業後、ひきこもり生活を経て2005年に「冷たい水の羊」(2007年刊行の『図書準備室』収録)でデビューした田中慎弥。本作の芥川賞受賞決定時の記者会見で「(賞を)もらっといてやる」と挑発的なコメントを放ち、一躍、時の人となった。地方の町の閉塞感をバックに展開するのは、暴力的な性癖のある父に対し、性に目覚めた息子が抱く生々しい葛藤。田中は激動する感情と濃厚な血の臭いを、あえて短いセンテンスでドライな独白に仕立てた。海に近い川辺に、父とその恋人と暮らす高校2年生の遠馬。実母は夫と別居し、近所で魚屋を営み一人暮らしをしている。夏休み間近、遠馬は幼なじみの千種と付き合うようになってから、父の遺伝子を恐れるようになった。何度も目撃した性癖が自分にも遺伝しているのではないか。母の衝撃の告白、父の恋人の嘆き、千種のつぶやきも、ぎこちなく成長する遠馬を動かす。大雨の夜、町が濁流にのみ込まれるクライマックスは圧倒的。併録の『第三紀層の魚』は第144回(2010年下半期)芥川賞の候補作となった。