



原宿団地物語
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3.9 • 14件の評価
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- ¥550
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発行者による作品情報
青山キラー通り沿い。高度成長期に建てられた原宿団地。大都会のど真中に取り残されたオアシスのような集合住宅だ。住人もみんなどこか一風変わっている。変わってはいるが人間同士の絆や温かな心をしっかり持っているひとたちだ。不安や焦りを抱え生きる彼らの、おかしくて泣けて、ちょっぴり勇気をもらえる物語。
APPLE BOOKSのレビュー
ヒキタクニオの「原宿団地物語」。著者はバイオレンス小説「凶器の桜」から青春小説「桜小僧」まで幅広いジャンルで執筆しているが、本作は、東京・青山に実在した原宿団地で繰り広げられる、心温まる短編の連作小説。8編の物語すべてに登場し、キーマンとなるのが、衣料品メーカーを定年退職した70代の小曽根。毎朝30分かけて団地の中の道路を掃き掃除するこの老人は、困っている人を見ると放っておけず、手を貸したり、話を聞いたりする。そんな彼を媒介として、都会で暮らす人々の悩ましい人生が鮮やかに写し出される。フリーの翻訳家、売れない中年の役者、広告デザイナーなど、いかにも都心に住んでいそうな人物を登場させる一方、下町生まれの小曽根の人間味あふれる言動や振る舞いを散りばめ、現代の人情物語を紡ぎあげた手腕が心憎い。舞台となる青山のキラー通り周辺は洗練されたイメージがあるものの、実は緑豊かという土地柄も十分にいかした、エンターテインメント小説。