



可燃物
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4.0 • 40件の評価
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- ¥1,800
発行者による作品情報
米澤穂信、初の警察ミステリ!
二度のミステリーランキング3冠(『満願』『王とサーカス』)と、『黒牢城』では史上初のミステリーランキング4冠を達成した米澤穂信さんが、ついに警察を舞台にした本格ミステリに乗り出しました。
余計なことは喋らない。上司から疎まれる。部下にもよい上司とは思われていない。しかし、捜査能力は卓越している。葛警部だけに見えている世界がある。
群馬県警を舞台にした新たなミステリーシリーズ始動。
群馬県警利根警察署に入った遭難の一報。現場となったスキー場に捜査員が赴くと、そこには頸動脈を刺され失血死した男性の遺体があった。犯人は一緒に遭難していた男とほぼ特定できるが、凶器が見つからない。その場所は崖の下で、しかも二人の回りの雪は踏み荒らされていず、凶器を処分することは不可能だった。犯人は何を使って“刺殺”したのか?(「崖の下」)
榛名山麓の〈きすげ回廊〉で右上腕が発見されたことを皮切りに明らかになったばらばら遺体遺棄事件。単に遺体を隠すためなら、遊歩道から見える位置に右上腕を捨てるはずはない。なぜ、犯人は死体を切り刻んだのか?(「命の恩」)
太田市の住宅街で連続放火事件が発生した。県警葛班が捜査に当てられるが、容疑者を絞り込めないうちに、犯行がぴたりと止まってしまう。犯行の動機は何か?なぜ放火は止まったのか?犯人の姿が像を結ばず捜査は行き詰まるかに見えたが……(「可燃物」)
連続放火事件の“見えざる共通項”を探り出す表題作を始め、葛警部の鮮やかな推理が光る5編。
APPLE BOOKSのレビュー
群馬県警捜査一課の葛(かつら)警部による、鮮やかな推理を堪能できる本格警察ミステリー『可燃物』。戦国武将たちの推理戦を描く第166回直木賞受賞作「黒牢城」など多彩な作風で知られる米澤穂信が、警察ミステリーに初めて挑んだ作品だ。本作で描かれるのは、はぐれ刑事の孤軍奮闘でもなければ、警察組織のキャリア制度の弊害でもない。これまでの作品がそうだったように、論理的整合性を追求した、知的遊戯としてのミステリーである。連続放火事件の思いがけない犯人像を探る表題作をはじめ、スキー場で起こった殺人事件で使用されたはずの凶器の行方を追う「崖の下」、事故の目撃者の証言に隠されたある事実を巡る「ねむけ」、バラバラにされた遺体遺棄事件の真相を解明する「命の恩」など、珠玉の5編を収録。さまざまなタイプのミステリーで読者を翻弄(ほんろう)しつつも、破綻のないフェアな謎解きで、読後感はすこぶる心地よい。それぞれの事件が奇想ではなく人間の感情から引き起こされている点も、本作を味わい深いものにしている。