土佐日記 土佐日記

発行者による作品情報

「土佐日記(とさにつき)」

紀貫之(きの つらゆき、866(貞観8)年頃〜945(天慶8)年)が平安時代に書いた日記文学です。
「男もすなる日記といふものを、女もしてみんとてするなり」の書出しで有名です。
紀貫之が赴任先の土佐から京都に戻る道中を題材に、同行する女性の日記の体裁で書かれました。

934(承平4)年、旧暦12月21日から翌年2月16日まで、約2ケ月に渡る船旅が毎日綴られます。
船君は雇い主の紀貫之、かじ取りは船長、船子は漕ぎ手、あと船人に女子供、高齢の乗客もいる様子。
新暦では、1月末に土佐を発って、3月の春分の頃、京都に着く感じでしょうか。
陸に沿って、ほとんど手漕ぎで進む船は、海賊の危険もあって、乗る人の気持ちを合わせます。
天気や海の風物、歌も詠みまくりです。
ようやく淡路を過ぎ、近付く京都、そして辿り着く我が家。
ただ、折に触れて思い出されるのは、任地の土佐で亡くした幼い娘でした。

本文を1冊の電子書籍にしました。
旧字旧仮名で総ルビです。
訳や注釈はありません。
元の女性らしい仮名書きは、過剰なくらい漢字表記に直していますが、ふりがな付きなので読めます。かえって注釈なしで意味は取りやすいかもしれません。

旧暦なので、日にちが月齢です。
2ケ月の船旅を、あなたもぜひ。

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廿日、昨日(きのふ)のやうなれば船(ふね)出(いだ)さず、皆(みな)人々(ひと〴〵)憂(うれ)へ歎(なげ)く。苦(くる)しく心許(こゝろもと)なければ、唯(た)だ日(ひ)の經(へ)ぬる數(かず)を、今日(けふ)幾日(いくか)、二十日(はつか)三十日(みそか)と數(かぞ)ふれば、指(および)も傷(そこな)はれぬべし。いと侘(わび)し。夜(よる)は寐(い)も寢(ね)ず。二十日(はつか)の夜(よ)の月出(つきい)でにけり。山(やま)の端(は)もなくて、海(うみ)の中(なか)よりぞ出(い)で來(く)る。斯(か)うやうなるを見(み)てや、昔(むかし)安倍(あべ)の仲麻呂(なかまろ)と言(い)ひける人(ひと)は、唐土(もろこし)に渡(わた)りて、歸(かへ)り來(き)にける時(とき)に、船(ふね)に乘(の)るべき所(ところ)にて、彼(か)の國(くに)の人(ひと)、馬(むま)の餞(はなむけ)し、別(わかれ)惜(をし)みて、彼處(かしこ)の詩(からうた)作(つく)りなどしける。飽(あ)かずやありけむ、二十日(はつか)の夜(よ)の月出(つきい)づるまでぞありける。其(そ)の月(つき)は、海(うみ)よりぞ出(い)でける。是(こ)れを見(み)てぞ、仲麻呂(なかまろ)の主(ぬし)、我國(わがくに)には斯(かゝ)る歌(うた)をなむ、神代(かみよ)より神(かみ)も詠(よ)ん給(た)び、今(いま)は上中下(かみなかしも)の人(ひと)も、斯(か)うやうに別(わかれ)惜(をし)み、喜(よろこび)もあり悲(かな)しみもある時(とき)には、詠(よ)むとて、詠(よ)めりける歌(うた)、

靑海原(あをうなばら)振放(ふりさ)け見(み)れば春日(かすが)なる三笠(みかさ)の山(やま)に出(いで)し月(つき)かも

とぞ詠(よ)めりける。彼(か)の國(くに)の人(ひと)、聞(き)き知(し)るまじく覺(おも)ほえたれども、言(こと)の意(こゝろ)を、男文字(をとこもじ)に樣(さま)を書(か)き出(いだ)して、此國(こゝ)の詞(ことば)傳(つた)へたる人(ひと)に、言(い)ひ知(し)らせければ、意(こゝろ)をや聞(き)き得(え)たりけむ、いと思(おもひ)の外(ほか)になん愛(め)でける。唐土(もろこし)と此(こ)の國(くに)とは、言葉(ことば)異(こと)なるものなれど、月(つき)の影(かげ)は同(おな)じことなるべければ、人(ひと)の心(こゝろ)も同(おな)じことにやあらむ。
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*目次*
├土佐日記
│├12月21日 (1日目)
│├12月22日 (2日目)
│├12月23日 (3日目)
│├12月24日 (4日目)
│├12月25日 (5日目)
│├12月26日 (6日目)
│├12月27日 (7日目)
│├12月28日 (8日目)
│├12月29日 (9日目)
│├1月1日 (10日目)
│├1月2日 (11日目)
│├1月3日 (12日目)
│├1月4日 (13日目)
│├1月5日 (14日目)
│├1月6日 (15日目)
│├1月7日 (16日目)
│├1月8日 (17日目)
│├1月9日 (18日目)
│├1月10日 (19日目)
│├1月11日 (20日目)
│├1月12日 (21日目)
│├1月13日 (22日目)
│├1月14日 (23日目)
│├1月15日 (24日目)
│├1月16日 (25日目)
│├1月17日 (26日目)
│├1月18日 (27日目)
│├1月19日 (28日目)
│├1月20日 (29日目)
│├1月21日 (30日目)
│├1月22日 (31日目)
│├1月23日 (32日目)
│├1月24日 (33日目)
│├1月25日 (34日目)
│├1月26日 (35日目)
│├1月27日 (36日目)
│├1月28日 (37日目)
│├1月29日 (38日目)
│├1月30日 (39日目)
│├2月1日 (40日目)
│├2月2日 (41日目)
│├2月3日 (42日目)
│├2月4日 (43日目)
│├2月5日 (44日目)
│├2月6日 (45日目)
│├2月7日 (46日目)
│├2月8日 (47日目)
│├2月9日 (48日目)
│├2月10日 (49日目)
│├2月11日 (50日目)
│├2月12日 (51日目)
│├2月13日 (52日目)
│├2月14日 (53日目)
│├2月15日 (54日目)
│└2月16日 (55日目)
└底本などに関する情報

ジャンル
小説/文学
発売日
2025年
8月21日
言語
JA
日本語
ページ数
30
ページ
発行者
犬井
販売元
Umemura Toshiaki
サイズ
253.6
KB
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