地図と拳 上
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4.3 • 6件の評価
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- ¥950
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発行者による作品情報
日本からの密偵に通訳として帯同した細川。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。桃源郷の噂に騙されて移住した孫悟空。地図に描かれた存在しないはずの島を探し、海を渡った須野。日露戦争前夜、満洲の名もなき都市に呼び寄せられた人々は、「燃える土」をめぐり殺戮の半世紀を生きる。広大な白紙の地図を握りしめ、彼らがそこに思い描いた夢とは……。第13回山田風太郎賞受賞作。第168回直木三十五賞受賞作。
APPLE BOOKSのレビュー
第168回(2022年下半期)直木賞受賞作 - 壮大なスケールの架空歴史小説。満州の架空の都市に引き寄せられた男たちの生きる姿を通して、日露戦争前から第2次大戦終結後までの約50年間を淡々と描く。スパイに帯同した軟弱そうな日本人、鉄道網拡大のために派遣されたロシア人宣教師、叔父にだまされて不毛の地へと流された中国人。多くの登場人物は道しるべとなる地図と戦うべき拳を持つ一方、それらは偽りの情報や暴力にもなり振り回される。土ぼこりや腐った水、血の臭いさえ感じられるような表現力が際立つ。次々と起きる史実である国家間の戦争と、そこで生きる人々の人間ドラマが融合し、著者の得意とするSF的要素、中国の幻想小説的要素まで織り込まれる。激動の時代をそれぞれの視点で描くことで、国同士の争いとは、決して正義と悪の戦いではないと痛感させられる。時代のうねりの中で、国や立場によってまったく違った視点があることを知り、タイトルに込められた意味にもう一度思いをはせたくなる読後感がある。