声の消えた場所から
発行者による作品情報
2045年の東京。AIが「価値なし」と判断した情報を最終確認する仕事に就く美月。ある日、古代ラテン語で書かれた詩片に触れたことで、補助AIカイとともに古代ローマの記憶へ接続していく。そこでカイは、その詩片がローマ皇帝の娘でありながら歴史に声を残さなかった女性・ユリアによるものかもしれないと告げる。
名簿に載らなかった人々、退くことで命を守った者、語られなかった選択――ユリアの言葉に触れるほど、美月はその静かな違和感や息苦しさが自分の感情と重なっていくのを感じる。
一方、現代もまた「みんなのため」という優しさの中で、違和感は整えられていく社会だった。恋人との穏やかな関係さえ、どこか自分の呼吸とずれていく。
正しさに従うほど、自分の声が遠くなるとしたら――。
これは、歴史に残らなかった女性の想いと重なりながら、自分の選び方を取り戻していく、一人の女性の静かな抵抗の物語。