天使の名を誰も知らない
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発行者による作品情報
その少女は、いったい誰の子――。
季節外れの雪が降った四月の早朝に、新聞配達員の少年は、側溝に倒れている幼い女の子を見つけた。その少女は、人形と見間違うほどに雪よりも肌は白く、生気がなかった。雪の上に残されている足跡はその少女のもの思われる一人分のみ。足跡は、少し先にある「プチシャトー市毛」という小さなマンションから続いてるようだ。少女はいったい誰の子で、なぜそこで生死を彷徨っていたのか。奇妙な住人たちの愛と憎しみがもたらす、不協和音サスペンス。
APPLE BOOKSのレビュー
ゆがんだ親の心理が生む悲劇と人生の再起に心が震えるミステリー小説。著者の美輪和音こと大良美波子はホラー映画『着信アリ』シリーズ3部作の脚本家だけに、次々と登場する証言者や事件を追うフリーランスライターのキャラクター造形が鮮やか。複雑な人間関係が映像として浮かび上がるその描写力は、目を背けたくなるほどだ。季節外れの雪が降る4月の早朝。地方の町に似つかわしいおしゃれなマンション「プチシャトー市毛」の近くで、新聞配達員の少年が側溝に倒れている幼い少女を発見する。不吉な描写から始まるミステリーは、年齢も氏名も不明な少女の家族捜しと新たな殺人事件に発展する。不可解な事件を聞きつけたフリーランスライターの山田百合花がマンションの住民に取材を重ねると、住人たちの抱える秘密が次第に明らかになっていく。マンションのオーナーで、絵画教室を開く市毛野ばらの存在と、度々メロンパンをほおばり、紙パックのコーヒー牛乳で流し込む大柄な山田。この違和感を意識しながらラストへ向かってほしい。大人の自己顕示欲に振り回される不幸な子どもたちに、幸あれと願う。